サイト投稿 裸さらす少女たち


サイトに投稿、闇から返答

 その携帯サイトにたどり着いたのは、ほんの偶然だった。2006年初夏。兵庫県の自宅で、着メロをダウンロードするサイトを眺めていた中学3年のマミ(仮名)が画面の端に表示された広告などを2、3回クリックすると、現れたのは、裸体をさらした同世代の少女たちの生々しい写真だった。

 「これ、なに?」

 マミが開いてしまったのは写真投稿サイト。自分の写真を投稿し、閲覧者は気に入った写真の投稿者あてのコメントを書き込める。閲覧者による人気投票もあり、上位にランキングされた写真ほど、過激で露出度も高い。

 おっかなびっくり見ていたマミが、下着を脱いでケータイで自分の裸を撮影するまで時間はかからなかった。

 〈はじめまして。投票してね〉と書き込むと、すぐ何通ものコメントが寄せられた。〈きれいな肌だね〉〈仲良くしたいな〉〈会いたいよ〉――。ランキングが上がるたび、ほめられているような気持ちになった。

警察官6人が突然、自宅を訪ねてきたのは、その年の秋だった。

「あなたの写真でしょ」。女性警察官に突きつけられたのは、自分の裸の画像だった。同じサイトに投稿していた14~23歳の5人と共に、マミはわいせつ物陳列容疑で書類送検された。

 「モヤモヤした気分を晴らしたかったんだと思う」。今、母親(47)は娘をこう気遣う。

 写真を投稿する少し前、マミは体を壊し、好きだった運動部を退部していた。同じ時期に始まった学校裏サイトでの陰湿なイジメにも悩んでいたという。

 同じような投稿サイトは星の数ほどある。パソコンで利用できるタイプと違い、携帯サイトは利用者の年齢層も低い。「子供も使う以上、ケータイには何らかの制限が必要。うちの娘みたいに、ちょっとした出来心で取り返しのつかない事を起こしてからでは遅い」。母親は苦い思いで振り返る。事件後、マミは自分から「きちんと扱う自信がない」とケータイを母親に返上した。

ケータイの世界では、なぜか軽い気持ちで自分をさらけ出してしまう。投稿サイトに限らず、そんな子供たちは少なくない。

 都内の高校2年のナツミ(16)のプロフ(自己紹介サイト)を開くと、うっとりと目を閉じてカレとキスしている彼女自身の写真が目に飛び込んできた。実名や学校名、生年月日のほか、「カレにやっと思いが届きました」など日常の思いもつづられている。

 「知らない人に読まれて、怖くない?」と尋ねると、「その時はその時だよ」とあっけらかんと答える。

 だが、プロフに顔写真を掲載している別の少女は、見知らぬ男からのこんな書き込みにゾッとしたことがある。〈街でよく見かけますね〉。書かれていた都内の地名は彼女の地元だった。誰かに見られている。そう思うと気持ちが悪い。

 「思春期は『他人に認められたい』という思いが強いものだが、ケータイはそれを簡単に満たしてしまう」と指摘するのは浜田寿美男・奈良女子大教授(発達心理学)だ。「しかも、ケータイだと直接的な身体の危険を感じないので、通常ならためらうはずの行為であっても、簡単に一線を越えてしまう」

 書類送検から2年余。この春、高校3年になったマミは進路を真剣に考え始めた。だが、「いつあの件がバレるか」という不安は消えない。いったんネットの世界に流れた画像は、永久にコピーが繰り返され、どこに出回っているかわからないからだ。マミは、今もケータイを使うのが怖い。

2009年4月26日 読売新聞

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