<居所不明小中生>孤立の母子に支援課題 DVなどで大幅増


 居所不明児が1183人に上るとした文部科学省4日発表の学校基本調査。虐待、ドメスティックバイオレンス(DV)、貧困……。過酷な環境にある子供をどう見つけ、支援の手を差し伸べるかが大きな課題として浮かび上がった。【後藤豪、反橋希美、平野光芳】

 DV被害者や経済的に困窮する母子世帯を数多く受け入れている近畿の母子生活支援施設では数年前、40代後半の母親と小学1年の長男が突然、行方不明になった。

 母子は住む家もなく、行政の窓口を頼って入所。当時、長男は通学していなかった。施設に入って生活は安定したかに見えたが、母親は生活費の使い道などを巡って職員らと度々トラブルになった。結局4カ月後、長男を学校に迎えに行き、そのまま所在不明に。部屋には衣服や食卓が残ったまま。施設の職員は「親が周囲とのつながりを断つと、子供も行方が分からなくなる。笑顔で遊んでいたあの子はどこに行ったのか……」と案じる。

 「そういう人は何年もここには住んでいませんよ」。埼玉県内の中学校の教頭は09年4月、訪問先のマンション管理人からこう言われ絶句した。住民登録上、4月に入学する子供がいるはず。だから教頭は2月から家庭訪問を繰り返し、呼び鈴を押し続けた。結局、地元の教育委員会が居所不明と判断。教頭は「住民登録がある以上、いつまでも不明扱いになってしまうのが心苦しい」と話す。

 「『親が子供の利益を代弁している』という教育の前提が既に崩れている」とみるのは児童虐待に詳しい西澤哲・山梨県立大教授(臨床福祉学)。「自治体は(居所不明者の)数字の持つ意味を見失ってしまった。もっと子供に何が起きているのかを、国がきちんと究明すべきだ」と指摘する。

 また社会的弱者の自立支援に詳しい藤木美奈子・龍谷大短期大学部准教授は「貧困や虐待などの過酷な成育歴、精神的な疾患などにより対人関係が築けず、各地を転々とする母子は以前から存在する。負の連鎖を断ち切るため、子供を社会全体で育む仕組みが必要」と話す。

 ◇解説 行政は連携して対応を

 「居所不明児」の調査は1961年から、文部科学省の学校基本調査の一環で行われてきたが、正確な人数すら把握できないほど形骸化していた。不明になる理由はさまざまだが、子供が生活・学習面で不安定な環境に置かれていることは間違いない。不明児が今どこで何をしているのか。徹底した所在調査をすべきだ。

 最も危険なのは、親の虐待やネグレクトで生死にかかわるようなケースだ。岡山県倉敷市では02年、「居所不明」だった少女(当時11歳)が県営団地の一室で餓死しているのが見つかった。母親が行政に不信感を抱いていたとされ、娘である少女とともに住民票を移さずに各地を転々とした。少女は学校にも通わせてもらえず、生活保護などの支援も届いていなかった。

 背景にドメスティックバイオレンス(DV)被害があるケースも少なくない。父親の追跡を恐れ、子の転校届すら出せないこともある。外国籍の児童が届けを出さずに帰国したり、親が借金苦で夜逃げしたりするなどの理由もあるだろう。

 不明児をなくすためには、学校だけで問題を抱え込むのではなく、児童相談所や警察、入国管理局などとも連携し、情報を共有する必要がある。居住地に子供の姿が見えなかった場合、行政の機敏な対応が求められる。【平野光芳】

毎日新聞 8月4日(木)22時37分配信

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