“子どもの性の商品化”実態は…

おはよう日本

2014年10月5日(日)

水着姿の少女たちが、さまざまなポーズをとる映像がおさめられたDVDです。
出演しているのは、中学生以下の子どもたち。
中には、「3歳の幼児」というものまで。
こうしたDVDは映画やドラマと同様、一般向けの商品として販売されています。
しかし、街で外国人に聞くと、日本のこうした状況は驚きだといいます。

アメリカ人
「子どもをモノ扱いしている、ひどい。」

 

 

 

ドイツ人
「ドイツでこういうものが売られていたら、デモや反対運動が起きる。」

 

中には、業者にだまされて撮影され、大人になっても心の傷を抱え続けている人もいます。

被害を受けた元少女
「男性が嫌いになって、触れられると、けいれんを起こしてしまう。」

最近、深刻な被害の報告も増えている「子どもの性の商品化」。
今日(5日)は、この問題を考えます。

和久田
「まずは、こちらをご覧ください。
児童ポルノ禁止法違反の疑いで検挙された件数の推移です。
子どもを被写体にした映像の販売などでの検挙は、ここ10年で急増していて、去年(2013年)は過去最多となる1,644件に上っています。」

池田
「検挙の件数がこれだけ増えているわけですけれども、実は、被害を訴えることもできず泣き寝入りしている、そんな被害者も少なくないことが明らかになってきました。
被害の実態と背景を取材しました。」

進むアイドルの“低年齢化”

先月(9月)、東京都内で開かれたアイドルグループの交流会。
ファンおよそ50人が集まりました。
最近は、アイドルの低年齢化が進んでいます。
この福岡出身のアイドルグループの中にも、中学生の姿がありました。

アイドルを身近に感じてもらう握手会などの仕かけも、ブームに拍車をかけています。
同封された握手会などのチケットを目当てに、同じCDを10枚以上買うファンも少なくありません。

こうしたCDや写真集など、アイドル関連の売り上げは年間で少なくとも700億円に上ると見られています。
人気アイドルの中には、子どもの頃に街でスカウトされたケースもあります。
普通の子がアイドルになれる時代。
自分もアイドルになりたいと、憧れる少女たちが増えています。

“アイドルへの憧れ” 利用されるケースも

しかし、そうした少女たちを狙った悪質なプロダクションにだまされ、性的な被害にあうケースもあります。
東京都内に住む20代の女性です。
小学6年生の時に、街中で“アイドルにならないか?”と声をかけられました。

女性
「雑誌とDVDへの出演がメインになるので、ちょっとした水着は着てもらうけど、簡単なお仕事ですと言われた。」

アイドルに憧れていたこの女性は、勧められるまま芸能事務所と契約しました。
しかし、待っていたのは予想もしていなかった演出での撮影でした。
現場は男性ばかり、撮影を拒否できない雰囲気の中、演出はどんどん卑わいなものになっていったといいます。

女性
「水着のサイズがTバックとか、薄っぺらいパットが入っていない水着とか、そういうものしかなかった。
股間の接写とか、あおるように下から撮って、だまされたなと思った。」

女性は今も、その時に負った心の傷に苦しんでいます。

女性
「私はそのことで男性が嫌いになったのか、不潔なイメージを抱いていて、触れられるのも鳥肌が立つというか、けいれんを起こしてしまう。」

児童ポルノ禁止法 改正の影響は

こうした被害の声があがる中、子どものわいせつな写真や映像を取り締まる「児童ポルノ禁止法」が今年(2014年)6月に改正され、規制が強化されました。
これまで曖昧だった「児童ポルノ」の定義について、子どもの胸など性的な部分を強調し、性欲を刺激するような写真や映像など、としました。

さらに、性欲を満たす目的で所持すること自体を新たに禁止し、罰則も設けられました。
しかし、ビデオの業界をよく知る関係者は、法律が改正されても一部の制作現場の意識はそれほど変わらず、手口も悪質だと証言します。

ビデオ業界を知る関係者
「(法改正は)関係ないよといって、どんどん過激に進んでいる会社もいくつかある。
実際、高校生にTバックをはかせてみたりとか、中学生くらいのアイドルに下着を着けて撮影させたりという会社もいくつか聞いている。
(撮影現場に)両親のどちらかがついてくるが、買い物に行かせてあげたり、エステに案内したり、親をできるだけ現場から遠ざけようとする。
その間に撮影してしまう。」

ネットで被害にあうケースも

インターネットを通じて、同じような被害にあうケースも増えています。
この女性は中学生の時、携帯のサイトで自らのプロフィールを公開していました。
ある日「モデルをしてみませんか」と勧誘のメッセージを受け取りました。
軽い気持ちで誘いに乗ったといいます。

待ち合わせ場所のカラオケボックスにいたのは、中年の男性でした。
突然、その場で下着に着替えるように言われます。
抵抗もできず、そのまま写真を撮られました。

女性
「写真を撮っている人が言っていたのは、“下着を販売するにあたって使うイメージ写真”。
透けていたりとか、全身タイツみたいな穴あきの(もの)。
下着ではないよな、みたいな。」

 

その後、思いがけない事実を知ります。
その写真がネットを通じて、海外で販売されていると、友人から知らされたのです。
しかし、誰にも相談はできませんでした。

女性
「何やっているんだってなっちゃうだろうし、親にも言えない。
警察に言ったところで、自分も悪いしってなっちゃうだろうし。
(写真は)抹消されないし、消えないだろうし、ネットは。」

性の商品化から子どもを守るには

「子どもの性の商品化」を防ぐにはどうすればよいのか。
先月(9月)、東京都内で開かれた講習会です。
学校の教師や、被害にあった子どもを支援する団体などが集まり、解決策を模索しました。

支援団体の代表
「子どもたちを吸い込ませるわながすごくあるし、それを容認する社会に私たちは生きているということを、強く意識していかなければいけないと思う。」

支援団体の代表
「どれだけ、そこに積極的に関われるかということなんじゃないかなと思う。」

ここに参加した金沢幸枝(かねざわ・ゆきえ)さん。
性的な被害にあった子どもたちの相談を聞き続けてきました。
子どもたちが匿名で相談できるホットラインを去年から始めた金沢さん。
性的な被害を周囲に打ち明けられない子どもが多いことに、驚いたといいます。

子どもから匿名相談を受ける 金沢幸枝さん
「相談できる相手、大人がいない。
友達どうしで、これってちょっとヤバいのかなという相談もうまくできていない。
悪循環になってしまい、自分を傷つけてしまうケースが本当に多くなってきている。
誰か1人でいいので、子どもに、その子にとって1人でいいから、信頼できる大人ができればそれは回避されると思う。」

“性の商品化” 子どもを守るには

池田
「取材した伊達記者とお伝えしていきます。
元少女たちの深刻な、そして痛切な訴えがありましたけれども、子どもたちの被害の実態を取材する中で、伊達さんはどんなことを強く感じましたか?」

伊達記者
「今回、取材した被害者には、1つの共通点があると感じました。
それは、子どものころ誰かに『認めてもらいたい』『必要とされたい』という気持ちを強く持っていたということです。
それは子どもにはよくある感情だと思うのですが、その感情につけ込まれて悪意を持った大人にだまされ、被害にあっていました。
加害者は、最初は子どもたちの悩みの相談に乗ったりして、あたかも理解者のようにふるまい、信頼させた上で撮影を行うなど、手口が非常に巧妙だと感じました。」

和久田
「冒頭で外国の方が、この日本の状況が信じられないと言っていましたよね。
この6月に法律が改正されるまで、日本では一体どんな議論がされてきたんでしょうか?」

伊達記者
「『児童ポルノ』の定義づけによっては、表現の自由が侵害されるのではないか、あるいは単に所持しているだけで処罰の対象としていいのかなど、議論が続いてきました。
今回の法律の改正については、日本雑誌協会と日本書籍出版協会は声明を出し、『児童保護という本来の目的から大きく逸脱し、表現規制につながる危険性があり、到底容認できない』などと訴えています。
さらに日本弁護士連合会は、『警察などの捜査権の乱用につながり、人権が侵害されるおそれがある』と会長声明を出しています。」

池田
「そういう懸念の声もある中で、実際に検挙件数も増えるなど、被害は増えているわけですよね。
これを防ぐために、我々にはどういうことが必要なんでしょうか?」

伊達記者
「子どもを性の対象にすることを許さない社会を作っていくことではないかと思います。
児童ポルノの問題に取り組んできた専門家は次のように指摘しています。」

児童ポルノ問題に詳しい 後藤啓二弁護士
「欧米では、子どもの性を対象とすることは絶対に許されないとされていて、出版社がそういう本を出すとかいうことは、到底考えられないことなんです。
一刻も早く改めて、子どもを性の対象とする(こと)、商品化することは絶対許されない行為だということを、強く社会に意識を浸透させていく必要があると思う。」

 

伊達記者
「まずは私たち大人が、子どもたちの性の商品化の実態に目を向けて、この問題と正面から向き合うことが求められているのだと思います。
被害を防ぐということが第一に大切ですが、それでも被害が起きてしまった場合には、子どもたちがその被害のことを、家庭の中だけではなく、家庭の外でも相談できる場所を増やしていくという必要があると思います。」

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