「裸の写真を彼氏に送った」相談も…目立つ自画撮り被害、サイト出品者を続々逮捕
アダルトサイトで大量の児童ポルノが売買されていた事件を捜査している愛知県警などの合同捜査本部がサイトの運営者に加えて、出品者の摘発を続けている。これまでに男9人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(不特定多数への提供)容疑で逮捕。さらに購入者の捜査も進めている。(徳澄奏、薦田大和)
■■20万回ダウンロード
9人目の逮捕者となった埼玉県北本市の無職男(38)は、出品した動画が約20万回ダウンロードされ、4年で1億1000万円以上の利益を得ていたとみられる。同法は児童ポルノをパソコンなどで保存する「単純所持」も禁じている。捜査本部は押収した約2万人の会員リストを基に捜査しているが、全国の警察には「サイトを利用したが、捕まるのか」などと、500件以上の相談があるという。愛知県警の岸本一也・生活安全部長は「高い金を払ってでも買う人間がいる限り、売る人間は出てくる。児童ポルノは売っても買っても犯罪だと認識させる必要がある」と語気を強める。
■■自画撮り被害防ぐ
近年、目立つのが相手に求められ、裸などを撮影して送る「自画撮り」被害だ。19年は全国で584件と児童ポルノ被害全体(1559件)の約4割を占める。SNSなどで同年代の同性を装って近づき、警戒心を解いて下着姿などを送らせるケースもあるという。こうした被害を防ぐため、18歳未満の子供にわいせつな画像を送らせる行為を罰則付きで禁じる条例が、少なくとも32都道府県で制定され、東海3県でも三重県で設けられている。群馬県のように制定に向けた準備を進める動きもある。これまでに警視庁などが条例を適用し、裸や下着姿の画像を少女に要求した疑いで男らを書類送検している。今年10月には、北海道警が女子高校生にSNSで「自画撮り」を要求した疑いで男子高校生を札幌家裁に書類送致した。
■■軽すぎる罰則
捜査本部が摘発を強化するのは、一度でもインターネット上に流出した画像や動画は、完全に消去するのが困難で被害が深刻なためだ。実際、捜査本部が摘発した男2人は、13歳の少女の同じ動画を販売していた。 裸の写真を彼氏に送ってしまった」。ネット上の画像の削除要請を請け負うNPO法人「ぱっぷす」(東京)には、年間150件ほど、こうした相談があるという。金尻カズナ理事長(39)は「『私も罰せられてしまうのか』などと悩み、精神的な苦痛を感じている児童も多い」と話す。ただ、児童ポルノの販売は裁判で有罪になっても数十万~数百万円の罰金刑にとどまることが多く、金尻理事長は「被害の深刻さを考えれば軽すぎる。販売で得た全額を没収するなど、出品者に利益を与えない仕組みが必要だ」と訴える。甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「SNSの普及で、加害者と児童が保護者の目が届かない方法でやり取りできる状況になっている。被害者を生まないように安易に画像を残すことの危険性を教えていくことも重要だ」としている。