「絶対に許せない」発達障害の生徒に性的虐待、母憤り 元役員を容疑で書類送検

5/7 西日本新聞

福岡県警は6日、発達障害などがある子どもを支援する放課後等デイサービス事業所に通っていた女子生徒にみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反(淫行させる行為)などの疑いで、元事業所運営会社役員の男性会社員(40)を書類送検した。捜査関係者への取材で分かった。県警は起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。書類送検容疑は2019年8月ごろ、県内で当時10代前半だった女子生徒を深夜に連れ回し、みだらな行為をした疑い。容疑を認めているという。関係者によると、女子生徒には発達障害があり、元役員は宿題の面倒をみるなど支援に携わっていた。県警は、支援者の立場を悪用したとみている。放課後等デイサービスは、放課後や長期休みに、障害のある小学生から高校生までの子どもに居場所を提供する事業。社会福祉法人やNPO法人、企業が都道府県や政令市の認可を得て運営。一人一人に合った支援計画を作成し、生活能力を高める訓練などを行う。福岡県障がい福祉課は取材に「障害者虐待防止法に基づいて事業所を運営していた会社に事実確認し、対応を検討したい」とした。 (長松院ゆりか)

放課後等デイサービスは全国に約1万5千事業所(2020年12月現在)あり、制度が始まった12年の約5倍になった。保護者のニーズの高まりもあり増え続けているが、参入要件が緩いことなどから質の低下も懸念されている。「指導も熱心で信頼していた。こんなことをしていたなんて、絶対に許せない」。被害に遭った女子生徒の母親は取材に応じ、こう憤った。母親は仕事を抱え、付きっきりで育児をすることが難しかったため、小学高学年の時から女子生徒を事業所に預けた。ある日、女子生徒のスマートフォンを確認すると、元役員との性的なやりとりや画像が残っていた。女子生徒は、元役員から「人にばれたら会えなくなるよ」などと口止めされ、施設内や送迎の車内などでわいせつな行為をされていたと打ち明けた。性的な画像を送るよう求められたこともあったという。母親が問い詰めると、元役員は「娘さんのことを真剣に思っている」。女子生徒には発達障害があり、困ったときに周囲に助けを求めることが苦手な面があるという。当初は「嫌じゃなかった」と説明していたが、状況を理解するにつれ「大人のことが信じられない。早く忘れたい」と口にするようになった。元役員は取材に、書類送検容疑について「心当たりがない」と説明。事業所を運営していた会社は今月、県内に別の事業所を立ち上げたが、「運営には関わらない」と話した。

放課後等デイサービスの運営は、保育士資格を持つスタッフを配置するなど形式的な基準を満たせば原則、認可される。利用料の9割は公費で負担。障害者の性被害撲滅に取り組むNPO法人「しあわせなみだ」(東京都)の中野宏美理事長は「他の障害者サービスに比べて利益が上がりやすく需要も高いので、参入事業者が増えている。質が疑われる事業所があるのも事実だ」と指摘する。発達障害のある子や保護者を支援するNPO法人「ハッピーママくらぶ」(福岡県久留米市)の鳥村孝子代表は「一般の学童保育では、障害の特性から他の子とトラブルになる恐れもある。親にとって、放課後等デイサービスは安心して預けられる場なのに、このような事件があると不安だ」と話した。厚生労働省によると、同サービスを巡っては19年度、利用者への身体的、性的虐待が全国で計64件確認された。障害者福祉に詳しい東洋大の是枝喜代治教授は「スタッフが個室で利用者と2人きりになる状況をつくらないなど、職員同士が互いに行動を確認できるような対策が求められる。行政は認可したら終わりではなく、運営の実態を定期的にチェックしていくことが必要だ」と強調する。

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