「タレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれる深く憂慮すべき疑惑」ジャニーズ性加害 国連人権理事会が会見で言及 「日本のメディアがもみ消しに加担」とも指摘

8/4関西テレビ

ジャニーズの性加害問題で、4日、大きな動きがありました。調査を続けていた国連の人権理事会が会見を開き、対応の問題点について厳しく指摘しました。

国連「ビジネスと人権」作業部会 ピチャモン・イェオパントン氏】 「証言によると、ジャニーズ事務所の特別チームによる調査については、その透明性と正当性に疑念が残っています」

4日午後3時から国連の人権理事会が開いた会見では、ジャニーズ事務所の性加害問題について厳しく言及されました。 今年3月、海外メディアが報じたことをきっかけに日本のエンターテイメント界を揺るがす問題となったジャニー喜多川前社長による性加害問題ですが、7月末に大きな動きがありました。国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の専門家が来日し、当事者らに聞き取り調査を行ったのです。

■国連の聞き取りを受けた元ジャニーズジュニア当事者「真摯に私たち被害者の声に耳を傾けてくださった」

性被害を受けたと告白した元ジャニーズジュニアの二本樹顕理(にほんぎあきまさ)さんも、人権理事会から聞き取り調査をされた1人です。

【被害を訴えた元ジャニーズジュニア 二本樹顕理さん(39)】 「非常に熱心に、真摯に私たち被害者の声に耳を傾けてくださって、私たちも本当に敬服した限りです。性加害を放置する国だというふうに思われてしまってはいけないので、そうした問題にはしっかり向き合っていく社会であってほしい」

国連人権理事会は今回、ジャニーズ事務所の性加害問題だけではなく、「政府や企業が人権上の義務と責任にどう取り組んでいるか」を調査するという目的で来日しています。 4日の会見では、ジャニーズの性加害問題についても言及がありました。

【国連「ビジネスと人権」作業部会 ピチャモン・イェオパントン氏】 「ジャニーズ事務所のタレントが絡むセクハラ被害者との面談では、同社のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになった。そのほか日本のメディア企業は数十年にもわたり、この不祥事のもみ消しに加担したと伝えられています」

また、政府に求められる今後の対応については、

【国連「ビジネスと人権」作業部会 ピチャモン・イェオパントン氏】 「政府やこの件について、私たちがお会いした被害者たちと関係した企業が、これについて対策を講じる気配がなかったことは、政府が主な義務を担う主体として実行犯に対する透明な捜査を確保し、謝罪であれ、金銭的な補償であれ被害者の実効的救済を確保する必要性を物語っています」

ジャニーズ事務所が立ち上げた最発防止特別調査チームについても、厳しい指摘がありました。

【国連「ビジネスと人権」作業部会 ピチャモン・イェオパントン氏】 「証言によると、ジャニーズ事務所の特別チームによる調査については、その透明性と正当性に疑念が残っています。ジャニーズ事務所のメンタルケア相談室による精神衛生相談を希望する被害者への対応は不十分だとする報告もあります」

被害を受けたと訴えている当事者たちは、会見の様子を別の部屋で見て、無言で手を取り合いました。 この調査内容はまとめられ、来年6月にも国連人権理事会が報告書を提出する予定です。日本だけでなく国際社会も注視する事態となったジャニーズ事務所の性加害問題。これを機に日本の社会は変わるのでしょうか。

■ジャニーズ事務所の性加害問題は、日本の社会に根深く残る「ビジネスと人権」の問題

ジャニーズ事務所の性加害問題を巡り、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の専門家が行った会見では何が指摘されたのでしょうか?そして今後この問題はどうなっていくのでしょうか?ビジネスと人権の問題に詳しい大阪経済法科大学の菅原絵美教授に聞きます。まず、会見での発言をまとめます。 国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会は、ジャニーズの性加害問題について ・被害者との面談で数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかに ・日本のメディア企業は数十年にもわたり、この不祥事のもみ消しに加担したと伝えられている ・ジャニーズ事務所が行った調査については、透明性と正当性に疑念が残っている こう話したうえで、政府は被害者の実効的救済を確保する必要があるとも述べました。 会見では具体的に「ジャニーズ事務所」という名前も出てきました。

【大阪経済法科大学 菅原絵美教授】 「ジャニーズ事務所の問題が代表するような『セクシャルハラスメント』という言葉が出ていましたけれども、日本の社会に根深く残る問題がそこに現れているということです。さらにはメディアを含む取引先も巻き込んだ課題であるということです。その重大性が示されたかと思います」

ジャニーズ性加害問題の被害者との面談に関して、「性的搾取、虐待」という言葉も出てきました

【大阪経済法科大学 菅原絵美教授】 「性的虐待、まさにジャニーズ事務所が取り組むべき課題ではあるんですけれども、やはり日本政府として、この被害者たちにどういう救済をするのかというところです。政府の義務、役割を指摘されたところは大きいかと思います」

メディアのあり方について、指摘を受けました。

【関西テレビ 神崎報道デスク】 「メディアとしては、過去にこの問題に対して積極的に調べたり、報じることがなかったということは言えると思います」

■国連の会見受け、被害を訴えている元ジャニーズジュニア当事者も会見

国連の会見を受け、性被害を受けたと訴えている元ジャニーズジュニア当事者の会見が開かれました。

【ジャニーズ性加害問題当事者の会 平本淳也代表】 「まず僕たちのメッセージがストレートに伝わったこと、それを受け止めてもらったこと、それに対して会見中にメッセージを僕たちにいただけたような印象で、逆にあそこまで語ってくれるとは思わなかったので、逆にびっくりした状態です」

【ジャニーズ性加害問題当事者の会 石丸志門副代表】 「さきほど国連人権理事会の作業部会から、ジャニーズの性加害問題があったものとして認定されたと思います。人類史上最悪の性虐待事件、これがようやく明るみに出た。この機会を今日得たと思っています」

あそこまで国連機関が語ってくれると思わなかった…という当事者からの言葉がありました。

【大阪経済法科大学 菅原絵美教授】 「現在グローバル市場の中で、人権尊重に取り組まないと、もう市場から排除されてしまうような動きにつながっています。身近なところで言えば、2025年の大阪関西万博の調達行動の中にも、国際的な基準に基づいた人権尊重ということが入ってきます。やはりこのビジネスと人権の問題を、非常に重大に受け止めていく必要あると思っています」

■国連人権理事会は重大な人権問題について政府や企業に勧告できる

国連人権理事会の役割ですが、菅原教授によると、人権について重大な問題があれば、政府や企業に対し、「ビジネスと人権」作業部会の調査に基づき勧告することができます。この勧告に法的な拘束力はありませんが、世界のマーケットに影響があって、取引、投資、消費者などに影響するということです。

【大阪経済法科大学 菅原絵美教授】 「国連というのは国が集まって、安全保障や経済や環境問題などさまざまなを議論をする場ですけれども、人権問題について議論する場が『国連人権理事会』になります。では人権理事会がどう人権問題に取り組むかといいますと、テーマに基づいて調査をして、『政府が何をするべきか、企業その他のアクターは何をするべきか』というところを勧告するのが、今回の作業部会の任務となります」

今回の調査結果は、来年6月の勧告に盛り込まれるということですが、これが大きな問題になるのでしょうか?

【大阪経済法科大学 菅原絵美教授】 「勧告は第一に政府に対してなされます。今日の会見でも、日本政府がどういう施策を取るべきかというところが、かなり大きく取り上げられました。同時に『ビジネスと人権』は企業が取り組む問題になります。企業も方針を立てて人権の影響評価をしていく、さらには救済の仕組み、声を上げる仕組みを作っていくといったところが提言されていたかと思います。そのような内容が勧告の中に入るかと思います」

勧告に法的拘束力はないということですが、それでも世界のマーケットに影響するんですか?

【大阪経済法科大学 菅原絵美教授】 「まず日本政府自体が『ビジネスと人権』に取り組むということで、2020年に行動計画を策定しています。まさに取り組むと言っているわけです。そして企業です。今日の会見冒頭にさまざまな企業の名前が出てきましたが、企業も“人権方針”を定めて、『ビジネスと人権』の問題に取り組むというふうにしています。 法的拘束力はないのですが、この問題に対する専門家がコメントしたということは、それを実現する責務を政府も企業を持っているということです。さらに調達等の仕組みに入ってきています。人権尊重に取り組まないと排除されます。ですので、この勧告が意味するところは、法的拘束力以上にマーケットへの影響も非常に大きいなと思います」

それからメディアが重く受け取らなければなりません。

【関西テレビ 神崎報道デスク】 「われわれテレビ局も、取引相手であるタレント事務所がちゃんと人権を守っているのかどうかを見ないといけません。人権を守っていないような取引相手であれば取引しないよと、企業としての責任・責務がありますので、ちゃんと自分の責任の中で取引相手の人権状況を把握して取引していくのが、最近の大きな流れだと思います」

■ジャニーズ性加害問題の今後

【大阪経済法科大学 菅原絵美教授】 「今回のジャニーズ問題というのは、ある種日本に根深く残る構造的な問題を浮かび上がらせたと言えるかと思います。日本社会の中にはこのような深刻なジェンダー・性に基づく課題があるということです。国内外含めて、これから日本企業と取引をしようという企業からは、自社が人権侵害に加担しないために、『ハラスメント問題に取り組んでいるかどうか』、『もし被害者がいれば救済を提供してるのかどうか』というところを、取引に際して問われていくことになるかと思います」

■視聴者から質問 Qなぜ国連が調査?→Aこれだけ重大視されているので問題視するのは当然

ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問です。 Q.日本政府は何らかの対応をとる必要がありますか?

【大阪経済法科大学 菅原絵美教授】 「今回さまざまなことが指摘されています。例えば中小企業も含めて、企業がビジネスと人権尊重に取り組んでいくための法的基盤、法制化が必要だという話が出てきました。また例えば今回のジャニーズ問題のような時、調査に入っていくような段階、もしくは日本政府の施策が足りないという時に、政府から独立した立場で助言をするような組織を作ることにも取り組んでいく必要があるかと思います。国際社会の中には政府とは独立したナショナルレベルの人権機関を作るという動きが広がっています」

Q.なぜ国連はジャニーズ事務所を調査することになったの?

【大阪経済法科大学 菅原絵美教授】 「国連が日本を訪問調査することは、私は4月ごろに情報を確認しました。じゃあ日本でどういう課題があるんだろうかということを、国連の担当者も調査しますし、また日本の専門家やNGO等にメールなどを通じて情報取集しています。その中で、これだけ重大視されているジャニーズ問題が、テーマの1つとして登場してくるのは当然のことかと思います」

ジャニーズ事務所は今回のこの性加害問題について、事実なのかどうかまだ明らかにしていない状況です。4日夕方にジャニーズ事務所から発表があり、現在調査を続けている外部専門家による再発防止特別チームが、ジャニーズ事務所に対する提言を8月末に行う見込みであるという情報がありました。ジャニーズ事務所には多くの所属タレントの方がいて、多くのファンの方がいます。関係者が納得できる対応を企業としてしなければなりません。政府も今回の問題を機に、改めて人権問題に取り組む必要があると思われます。

カテゴリー: ニュース, 性犯罪   パーマリンク