12歳タイ人少女の「人身取引」事件うけ、民間団体が集会「子どもの性を買う“需要”の根絶と被害者支援を」
12歳のタイ人少女が東京都内のリラクセーション店で性的な行為をさせられたとされる事件を受けて、人身取引を止める活動などを長年行ってきた民間団体などが集会を開き、「こどもを性の対象とする“需要”の根絶と被害者の継続的支援が必要だ」と訴えました。
国会近くで行われた集会は、20年以上活動してきた人身売買禁止ネットワークが開いたもので、国会議員や民間団体のスタッフ、市民らが参加しました。人身売買禁止ネットワーク共同代表で弁護士の吉田容子氏は「政府の統計には警察が把握できたものだけがあげられているが、それだけではない。(被害者を)物理的に拘束するだけでなく、意思をコントロールする場合もある。周辺に膨大な数の人身取引の被害者がいる。把握できているのは氷山の一角だと考えて対策する必要がある」と強調しました。
性的な店などで働かされる少女たちの相談を受け、支援活動をしてきたNPOの理事は「私たちが保護した中には小学生もいた」と述べました。そして、家庭で暴力などを受けて、家庭の外に居場所を探す少女に対して、性産業の業者は優しい仲間のような雰囲気で近づいて、その後「仲間の財布を盗んだでしょ」などと少女に言いがかりをつけ、少女は実際には必要のない示談金を支払うために、性産業で大人に買われる状態になったといった事例を発表しました。業者は、断る子どもたちからいかに性的な画像を送らせるか、いかにうまくホテルに連れていけるか、攻略ゲームのようなことが行われていると実態を語り、街で「君、いくら?」と子どもに声をかける大人がいること、子どもを買う大人がいることが問題で、厳罰化が必要だと訴えました。
別の発表者は、家に問題がある子どもだけでなく、“普通の子”がSNSで知り合った男性によって頭の中を操作され恋愛感情を持たされて、男性から「実は俺はホストで、ここを抜けだしたいが金がない」などと言われ、それを助けようとして、その子どもが性を売ることもあると解説。「それを買いに来るのは一般人です」と批判しました。先生やコーチなど子どもが信頼し、子どもから見て圧倒的な力を持つ立場の人による性加害もある、先生がこどもの性的な映像を撮影して売ることもあるなどと説明し、子どもの性的映像が大人のものより高額で売れる実態、アダルトビデオの視聴の低年齢化などが報告されました。また、海外を観光で訪れて子どもの性を買う実態についても発表され、政府には児童買春や性的搾取・虐待を明確に犯罪として禁止する法律を作ること、観光業界団体には従業員教育などを求めました。そして、「子どもの性を買わない、子どもの性を商品化したものを買わない」としっかりした意思を示していくべきだと訴えました。また専門家は「私たちは買春容認社会を見てこなかったんじゃないか」「人身取引の厳罰化を進めるのもよいが、それだけでは、被害者支援が足りない」などと指摘しました。
参加したある野党議員は「今回の事件で被害を受けたタイ人少女のケアと支援を日本政府の責任で行うべきだが、日本側で誰がそのコーディネートを担うか決まっていないということで、問題だ」と指摘しました。
そして、吉田容子弁護士は、子どもの性を買う側の“需要”が加害、被害を招くとして、客の責任は極めて重大だと指摘。需要根絶のためには、●人身取引禁止法を制定して、国と自治体に被害防止と被害者支援を義務付ける、人権の大切さも含め性教育や加害者への教育プログラムを行う、●18歳以上への買春行為の処罰化や児童買春、児童ポルノ製造などの罰則強化、●被害者への中長期的支援、●性搾取被害の実態調査を行うことなどを提言しました。


