インタビュー活動報告:ザ・ボディショップ

2012年1月13日(金)

2009年8月より、ザ・ボディショップは国際ECPATと協働し、3年間のグローバルキャンペーンとして「ストップ!子どもの人身売買トラフィッキング反対キャンペーン(Stop Sex Trafficking of Children and Young People)」を開始しました。トラフィッキング反対キャンペーンは世界65か国、2600店舗で実施されています。

ザ・ボディーショップコミュニケーション部                山崎綾子さん(左) 成岡若菜さん(右)

ECPATユースは3年間の「ストップ!子どもの人身売買トラフッキング反対キャンペーン」についてザ・ボディショップ(株式会社イオンフォレスト)コミュニケーション部バリューズグループの山崎綾子さん、成岡若菜さんにお話を伺いました。

「ストップ!子どもの人身売買トラフィッキング反対キャンペーン」に取り組むきっかけ

-目をふさぎたくなるような、耳をふさぎたくなるような課題こそボディショップが扱っていく-

ザ・ボディショップ創業者の故デイム・アニータ・ロディック氏は、“企業には世界をよくする力がある(Businesses have the power to do good)”と考え、環境、人権、動物に十分配慮した製品づくりに取り組んできました。ビジネスを通じて社会を変えることを目指し、特に、社会で見過ごされがちな課題や光が当たりにくい問題(*)を取り上げ、「無関係な人などいない」ことを伝えるためにキャンペーン活動を行ってきました。

(*)これまで、DV根絶キャンペーン、HIV/AIDS啓発活動、化粧品の動物実験反対キャンペーンなど行っています。

「今、解決していかないといけない問題は子どもの性目的の人身売買である。」
今回の「ストップ!子どもの人身売買トラフィッキング反対キャンペーン(以下、トラフィッキング反対キャンペーン)」も創業者の強い声から始まりました。創業者急逝後も、全世界のザ・ボディショップのスタッフは彼女の意思を継いで、トラフィッキング反対キャンペーンを始動することとなります。

日本でのトラフィッキング反対キャンペーンを中心となって担ってきた山崎さん、   キャンペーンをすると聞いたとき、どの様に感じたのか伺いました。

山崎さん)世界中の子どもたちが搾取され危険にさらされている“性目的の人身売買”をなくすために行動しなくてはいけない。ザ・ボディショップが率先して取り組むべき課題であると感じました。

ザ・ボディショップは化粧品やボディケア商品を扱う会社ではありますが、商品を通じて、特に女性たちの「美しさ」をサポートしたいと考えております。「メイクをしてきれいになる」「肌がしっとり潤う」ことで、日々の生活がぱっと明るくなる、その日1日を豊かな気持ちで過ごせるという経験はありませんか?外見の美しさは、内面の美しさを備えてこそ、ますます発揮されます。そのためにザ・ボディショップでは「Self-Esteem(自分を大切に思う)」を高めることにも力を入れています。

人身売買で被害にあう子どもたち、弱い立場の人たちは、経済的にも搾取されている背景があり自らの命の危険や不当な労働環境について訴えることが難しい状況にあることが多いです。そして性的搾取の被害に遭った人は、自分を蔑み、自分の体をいとおしく思えず自傷行為を繰り返すなど心身ともに傷つけられます。

人身売買は自分を大切に思う気持ちや、若者や子どもたちが安心や安全に暮らす権利を奪うため、「Self-Esteem」の観点からも、このトラフィッキング反対キャンペーンを通じて、1人でも多くの人の声を集めたいと思いました。

山崎さんはザ・ボディショップが扱うすべての商品に込められた意味とトラフィッキング反対キャンペーンに込めた想いを熱く語ってくださいました。

3年間のトラフィッキング反対キャンペーンの成果

3年間のキャンペーンは1年後ごとにステップを設け、行われてきました。

ステップ1(2009年):知らせる、社会への啓発

1年目はザ・ボディショップの店頭スタッフを対象にトラフィッキング反対キャンペーンの「推進」並びに子どもの人身売買に対する意識向上のための研修に力を入れられたとのことです。研修の成果について伺いました。

山崎さん)店長だけ、キャンペーン担当者だけではなく、できるだけ多くのスタッフに参加してもらいたいと考え、日本各地で1日3回ワークショップを開きました。全国600人の店頭スタッフの内280人が研修を受けました。世界の状況や日本がどう子どもの人身売買に関わっているのか、具体的な例をお話しました。また、ABCのドキュメンタリー「子どもを10時間で買う方法」というビデオを見てもらうなどし、実際に起きていることなのだとスタッフがまず認識することを目指しました。

と山崎さん。すべてスタッフが研修を受けた店舗もあると教えてくださいました。
店頭では、「日本でも、人身売買があると知っていますか?」「世界では年間120万人の子どもたちが性的搾取の被害に遭っています。」と研修を受けたスタッフ方がお客様にしっかりと伝えていきます。今回のトラフィッキング反対キャンペーンについても紹介をし、説明に納得いただいたお客様に「子どもの人身売買、トラフィッキングにNO!」の意味を込めたNo!No! シールを張るアクションに協力いただいたと言います。そのシールの数は10万3,146枚にも上っています。

ステップ2(2010年):具体的なアクションに人々を巻き込む

子どもの人身売買およびトラフィッキングの現状を変えるため、それぞれの国にあるECPATとパートナーを組み、その国に応じた目標を立てました。日本では包括的な法の整備、子どもの保護、意識啓発活動の拡充を求めることに焦点を当てています。それぞれの国の取り組み状況を12分野のカテゴリーに分け視覚的に表す「プログレス・カード」を作成し、その情報を公開することにも力を入れたそうです。

山崎さん)1年を通じて21万309名の署名が集まりました(*)。集まった署名の90%は店頭でのものであると伺い、ザ・ボディショップスタッフのみなさまの地道な声かけの賜物であると感じました。

(*)店頭20万4,062名、ウェブ6千247名。2011年5月1日現在

ステップ3(2011年):政府に伝える、署名を届ける

前年度に集めた約21万人の署名は、2011年7月に与党、各政党、各省庁への提出が行われました。署名提出までの心情をお聞きしました。

山崎さん)日本特有の国会や政党の情勢が気になっていました。しかし、国家議員の方に署名を受け取ってもらえるように呼びかけ、働きかけを始めると、どの議員さんも超党派で解決していくものだと言う認識の下、快くアポイントに応じてくれました。私たちボディショップもこの署名は一般の人が子どもの人身売買、トラフィッキングの課題を解決してもらいたいと思っている数だ、と記憶してもらえるよう、努力しました。

また、各国で行われた署名は、合計704万4,278名分となりました。これは数々の署名キャンペーンを行ってきたザ・ボディショップの歴史上でも最多数です。この署名は2011年9月29日に国連人権理事会に届けられ、国連からも各国政府に対し、子どもの性目的の人身売買問題の解決に向けて取り組みを強化するように働きかけるものになりました。署名は40カ国の首脳、大臣、国会議員などに届けられ、14カ国では法律の制定や国際議定書への批准などにつながりました。

世界で何万人ものスタッフがお客さまに署名を呼び掛けた結果、本当にたくさんのお客さまに署名にご協力いただき、実際に社会を変える一歩になっています。ザ・ボディショップの役割は、こうして毎日お買い物に来てくださるお客さまに、問題に気づいていただくきっかけになり、広めることです。すぐに解決できる問題ではありませんが、長い目で見た時に、問題意識を持った方が増えていけば良いと思います。

ザ・ボディショップ山崎さんより、読者へのメッセージ               -「商品」を通じて出来る国際協力があります-

山崎さん)「よりよい世界のために、何か行動をしたい」と考えている人は多くいるのではないでしょうか?

しかし実際には、「専門知識をもっていなければできない」、「NGOで働いている人だけが実現できることだ」「何をすればよいかわからない」と感じている方も少なからずいるのではないかと感じます。

ザ・ボディショップは「購入」を通じて〝人身売買にNO”、〝動物実験にNO”と言える商品があります。何か自分にもできることはないか、と考えている方は、是非ザ・ボディショップの商品を手に取っていただき、積極的に使っていただきたいと思います。

新商品情報

今回のインタビューの最後に、山崎さん、成岡さんより新しい情報を教えていただきました。それは4月に発売される「The STOP bag(セレブバッグ)」です。

このバッグは、ザ・ボディショップ社とジミーチュウの創業者兼チーフ・クリエーティブ・オフィサーであるタラマメロン氏と共同で制作したものだそうです。ピンク色がアクセントとなっていて、トラフィッキング反対キャンペーンに賛同しているセレブ達の手形がカラフルに刻印されています。ハリウッド映画で活躍している女優の二コール・キッドマン氏などの手形も含まれているそうです。

限定販売だそうなので、店頭で見かけた方は早めにお求めください。

編集ユースより一言

今回のインタビューは、3年間のトラフィッキング反対キャンペーンを終えるにあたり、ボディショップの方々の声、感想を聞いてみたいという目的で行いました。
多くのECPATユースはトラフィッキング反対キャンペーンを通じてボディショップと出会いました。3年間のキャンペーンを通じて、今ではボディショップの店舗をみつけると、思わずわっと嬉しくなるような親しみを感じています。

一方で、なぜ「子どもの人身売買の根絶」という、一見とっつきにくいと多くの人が感じるような課題に対して、こんなにも力を注いで活動してくださるのか、真剣に親身に「子どもたちが性被害に遭うことなく、健やかに育つ社会を目指す」という目標に向け、日々奔走する原動力についてもお話を聞きたいと思っていました。

インタビューを通じて、その様な機会を得ることができ、感謝しています。山崎さんのお話の中に次のようなものがありました。

山崎さん)ザ・ボディショップ社は一企業であるけれども、それを構成しているスタッフや社員は一市民です。市民として、社会や世界の問題に関心をもち、より良い社会を目指していくことが大切なのではないでしょうか

「私は何ができるだろうか」、自分の力を誰かのためやよりよい社会や世界を創るために使いたい、そのような気持ちをもって「働く」こと、それは仕事を通じて実現することも可能であるし、生き方として体現していくこともできる。私たちユースはその様に励まされたように感じました。

文責:五十嵐・佐々木(ECPATユース)