児童買春・児童ポルノ禁止法改正を求める要望書を提出しました

2021年4月7日、11団体が児童買春・児童ポルノ禁止法改正を求める要望書を提出しました。


衆議院議長 大島理森様
参議院議長 山東昭子様

内閣総理大臣 菅義偉様
法務大臣 上川陽子様
厚生労働大臣 田村憲久様
文部科学大臣 萩生田光一様
国家公安委員会委員長 小此木八郎様

要望書

子どもの性虐待・性搾取被害が悪化し続けています

今こそ国連勧告に沿った児童買春・児童ポルノ禁止法の抜本的改正を求めます

「子どもの権利の擁護」を目的とした初めての法律「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」ができてから22年、この間二度の法改正と法執行、関係業界や私どもNGOの協力等さまざまな努力が行われてきました。それにも拘わらず、被害の悪化が止まりません。

児童ポルノ事犯の検挙は2019年3059件、第二次法改正以降も過去最悪状態が続いています。被害の約9割は女子、男子の被害も増加しています。被害児童は個人特定できただけでも1559人で最悪を更新、また個人特定できずに医師等による年齢鑑定で事件化されたものを加えると被害実数はさらに多くなります。小学生以下の被害児童は2017年に前年の14%から22%へ急増、2019年は約19%となっています。またそうした低年齢の児童ポルノの27%は子どもへの強制性交・強制わいせつ(監護者による犯行を含む)により製造され、盗撮が51%となっています。ポルノ被害全体の約4割は自画撮らせ製造であり、中高生が、スマホを使い、コミュニティサイトで、面識のない人から、グルーミングにより言葉巧みに性的画像を送らされる事件が相次いでいます。

 児童買春等に関しても同法成立以降、減少傾向にありましたが2015年からは再び増加に転じ、2019年の検挙数は784件、被害児童数は同法だけで562人、児童福祉法と青少年保護条例による被害児を加えると1754人となっています。背景には、子ども特に“女子高生”を売り物にして客に性的サービスをさせる様々な「JKビジネス」の存在や、またより低年齢の子どもを標的に“着エロ”DVD・撮影会等のJC(女子中学生)JS(女子小学生)ビジネスの発生があり、現行の児童買春・児童ポルノ定義や児童福祉法においても、こうした新種の性搾取から子どもを守ることができていません。いくつかの自治体独自の条例による対策を除けば、18歳以上を使い女子高生や中学生のように見える恰好で客に性的サービスをさせる商売が合法的に成り立っています。また買春や性加害のトリガーになることが報告されている児童性搾取・性虐待題材には漫画・アニメを悪用したネットゲーム等も含まれています。これらは明らかに、未成年のイメージを使った子どもの性の商品化です。こうした商行為を放置することは、子どもを性的対象として自分の欲望のために使ってもよいという性搾取の価値観を日本社会に蔓延させることであり、子どもたちが日々安全に安心して暮らし育つ権利の著しい侵害に他なりません。

2015年訪日した国連特別報告者は、子どもの性搾取に対する日本社会の“容認”状況に苦言を呈し、許容ゼロ姿勢の強化を求めました。そして2019年2月発表の国連子どもの権利委員会による日本政府への勧告においても、2010年既に指摘されていた子どもの権利条約選択議定書(OPSC)に基づく以下のような対策の実現・実施が強く求められています。

(a)子ども、または主に子どものように見えるよう描かれた者が明白な性的行為を行っている画像及び描写、または、性目的で子どもの体の性的部位の描写を製造、流通、頒布、提供、販売、アクセス、閲覧及び所持することを犯罪化すること。

(b)「女子高生サービス」や子どもエロティカのように、子ども買春及び子どもの性搾取を助長し、または、これらに繋がる商業活動を禁止すること。

(c)加害者に責任を果たさせ被害者となった子どもたちの救済を確実なものとするために、オンライン及びオフラインでの子どもの売買、子ども買春、子どもポルノに係る犯罪を捜査、訴追し、処罰する努力を強化すること。

(d)性虐待や性搾取の被害者となった子どもに焦点を当て、質の高い統合されたケアと支援を提供するために、ワンストップ救援センターへの資金拠出と援助を増やし続けること。

(e)生徒、親、教員及びケア提供者を対象として、新しい技術に伴うリスク、及び安全なインターネットの利用法についてキャンペーンを含む意識喚起プログラムを強化すること。

(f)子どもの売買、子ども買春、子どもポルノに関する特別報告者の勧告(A/HRC/31/58/Add.1,para.74)を実施すること。

児童買春・児童ポルノ禁止法の成立から22年目、第二次改正からも6年を経た今日、横行する子どもの性の商品化や性搾取・虐待を撲滅し、子どもの性被害をなくすために、またGPeVACパスファインディング国の使命として、上記の国連勧告の内容を十分に検討し、性被害の現状を改善する抜本的な第三次改正を成し遂げて頂きますようお願い申し上げます。

2021年4月7日

ECPAT/ストップ子ども買春の会
公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会
公益財団法人日本YMCA同盟
特定非営利活動法人シンクキッズ-子ども虐待・性犯罪をなくす会
特定非営利活動法人ぱっぷす(ポルノ被害と性暴力を考える会)
アジアの女性と子どもネットワーク(AWC)
東京・強姦救援センター(TRCC)
認定NPO法人国際子ども権利センター(シーライツ)
特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン
特定非営利活動法人CAPセンター・JAPAN
一般社団法人Colabo(コラボ)
[順不同]

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