児童買春・児童ポルノ禁止法改正に関する緊急要望書
11月17日、11月25日に行いました「児童買春・児童ポルノ禁止法改正に関する緊急要望書」を掲載いたします。当日の配布の状況につきましては、11月17日の活動報告と11月25日の活動報告をご参照ください。
児童買春・児童ポルノ禁止法改正に関する緊急要望書
2011年8月に御党から国会に提出された児童買春・児童ポルノ禁止法の改正案は、児童ポルノの単純所持の処罰を見送るばかりか、2009年3月に御党から提出された改正案より大幅に後退したものとなっています。そこで、ECPAT/ストップ子ども買春の会は、子どもを守るため、下記のとおり、要望いたします。
1.「有償かつ反復による取得」の処罰化でなく、「単純所持の処罰化」を求めます。
現在の民主党案(第7条第1項)の「有償かつ反復による取得」の処罰化では、無償による取得や意図的な所持を処罰することができません。有償かつ反復による取得の処罰化はインターネットやブロードバンドの普及により、一度インターネット上にアップされた児童ポルノを無料で取り込み保存し、後にインターネットにアップして他人と交換することができるという現在の状況に全くそぐわないものです。また一度に大量に有償で取得した場合も処罰されない事になります。
児童ポルノは性虐待、性搾取の証拠であり、存在そのものが子どもへの重大な人権侵害です。単純所持を処罰化しなければ、証拠として現存する大量の児童ポルノに関して何ら手立てを講じることができません。顔をさらされたまま児童ポルノの被写体とされた子どもたちの人権侵害は、放置されたままです。
世界では単純所持の処罰化が進み、欧州ではすでに単純所持のみならず意図的な児童ポルノへのアクセスを禁ずる方向で規制強化が進んでいます。日本も一日も早く単純所持の処罰化を実現して頂くようお願い致します。
2.児童ポルノ製造について「複製して製造する場合を除く」との規定の削除を求めます。
民主党案(第7条第4項)では、児童ポルノ製造について「複製して製造する場合を除く」という規定が追加されています。これでは児童ポルノの複製による拡散を防ぐどころか、逆に複製による製造は構わないという抜け道を示すこととなり、子どもの人権保護の観点からは到底認めることができません。単純所持の処罰化により、児童ポルノを包括的に処罰化することを求めます。
3.架空の子どもへの性虐待を描写した漫画やアニメーション、コンピューターゲーム等の画像が児童ポルノに含まれるものではないとする民主党案を採用することなく、自公改正案附則にて規定されている、「児童ポルノに類する漫画等と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究の推進」を強く求めます。
非実写とはいえ、子どもに対する性虐待を性目的で描いた描写物は、子どもへの性虐待を容認する社会的風潮を生み出すものです。すでにカナダやスウェーデンでは日本の漫画の所持を有罪とする判決が出されるなど、子どもに対する性虐待を描写した日本の漫画の中には、他国では児童ポルノとして扱われる物が含まれています。こうした子どもへの性虐待を描いた描写物が、性虐待に用いられたり性犯罪につながった事例等の実態調査すらもすることなく、法律の規定からはずすことを明示的に認めるのは、性犯罪の加害者への漫画等の影響を危惧する現場の声とはかけ離れたものです。
2009年の国連人権理事会においても、国連特別報告者による各国政府への勧告のなかで、子どもポルノには、バーチャルなポルノや子どもを性的に搾取した表現も含むことが明記されています。非実写児童ポルノの影響について調査をし、その可否についてご判断を頂きたく、今回法律として非実写児童ポルノを含まないという規定を法案に含めることに反対致します。
4.民主党案の法律の適用規定(第3条第1項)での、適用にあたっての例外規定ともとれる規定の拡大に大変懸念を覚えるものです。
学術研究・文化芸術活動、報道等に関する国民の権利と自由の確保は、児童の権利に優先するものではありません。また捜査過程における警察の権力濫用の問題は、麻薬や拳銃等の捜査と同様にそれ自体としてしっかり議論されるべきものであり、ここで被害児童の権利と引き換えにされるべきではありません。第3条第1項は現行法のままの規定を求めます。
5.民主党案附則第3条の、地方自治体条例の失効を定めた規定の撤廃を求めます。
民主党案附則第3条では、地方自治体の条例で定めた児童ポルノの所持・取得・保管についての規定の失効を定めています。こうした条例失効を定めた附則は、それぞれの地方自治体が、条例で国の基準よりも厳しい基準を定めることにより、子どもの性搾取や性虐待を防ぎ、子どもの人権を守り、子どもにとってより安心な環境を提供しようとする、地方自治体の自主的な努力を踏みにじるものです。こうした条例失効を定めた附則は、地方自治の精神を脅かすものであり、地方分権推進の流れに逆行しています。条例失効を定めた民主党案附則第3条の撤廃を求めます。